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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)2182号 判決

控訴人(第一審参加原告反訴被告)

柏崎米吉

右訴訟代理人

林円力

外三名

被控訴人(第一審原告、参加並に反訴被告)

戸田氏直

右訴訟代理人

岡田実五郎

外二名

控訴人(第一審被告、参加被告反訴原告)

中山三行

右訴訟代理人

水島庄平

外一名

主文

原判決第一項は訴の取下により、同第四項は反訴の取下により各失効した。

控訴人中山の被控訴人戸田に対する金八〇〇、〇〇〇円とこれに対する昭和三八年一月二五日以降完済まで年五分の金銭の支払を求める請求を棄却する。

控訴人柏崎の本件控訴を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じ控訴人柏崎の参加前に生じたものは控訴人中山の負担とし、右参加以後に生じたものは本訴並に反訴共控訴人柏崎と同中山の平分負担とする。

事実

控訴人中山訴訟代理人は原判決中同控訴人敗訴の部分を取り消す。別紙目録記載の土地について被控訴人を貸主とし、控訴人中山を借主とする普通建物所有の目的の賃料一ケ月二五〇〇円月末払期間昭和五四年六月二二日とする賃貸借契約の存在することを確認する。訴訟費用は控訴人柏崎の部分を除き第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求めたところ、右確認の訴を変更し被控訴人は控訴人中山に金八〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和三八年一月二五日以降完済まで年五分金銭を支払えとの判決を求め、かつ仮執行の宣言を求めた。

控訴人柏崎訴訟代理人は原判決中同控訴人の被控訴人に対する請求を棄却し、控訴人中山に対する請求を却下するとある部分を取り消す。控訴人柏崎と被控訴人及び控訴人中山との間において別紙目録記載の土地につき昭和二二年三月一日成立の被控訴人を貸主とし控訴人柏崎を借主とする普通建物所有の目的の賃料一ケ月二五〇〇円、月末払、期間右土地引渡後一〇年間とする賃貸借契約の存在することを確認する。訴訟費用は、第一、二審共被控訴人中山の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人及び控訴人中山訴訟代理人はそれぞれ控訴棄却の判決を求め、右訴の変更に対し被控訴代理人は旧訴の取下に同意するが、旧訴は昭和二八年四月六日反訴として提起されたところ、新訴は旧訴の提起前である昭和二六年三月二六日賃貸借契約の履行不能が発生したとして反訴請求原因を変更したものであり、訴訟の係属中に発生した事由によるものではない。かかる場合の訴の変更は請求の基礎を異にするから訴の変更は許されず新訴は却下さるべきである。仮に訴の変更が許されるとすれば、新訴の請求を棄却するとの判決を求めた。<以下省略>

理由

控訴人中山訴訟代理人が被控訴人及び控訴人柏崎を相手方として本件土地について被控訴人を貸主とする賃貸借契約の存在確認を求めていたところ当審において被控訴人に対する金八〇〇、〇〇〇円とこれに対する昭和三八年一月二五日以降完済まで年五分の金銭支払を求める訴に変更し、被控訴人が旧訴である確認請求の取下に同意し、控訴人柏崎訴訟代理人は右訴の変更に対し異議なく弁論をなしたので、旧訴の取下に同意したものというべきである。したがつて旧訴につきなされた原判決第四項は失効し、右金銭支払請求の新訴が係属したわけである。

被控訴代理人は右訴の変更による新訴は反訴であるので、新訴の請求原因たる事実は反訴提起後に生じた事由であることを必要とし本件におけるように反訴提起前の事由をもつて新訴の請求原因となすことは請求の基礎を異にするものであつて新訴は不適法であると主張するけれども、賃貸借契約の存在確認請求を履行不能を理由として填補賠償請求に変更することはたとい反訴であつて、履行不能の事由が反訴提起前に発生していても請求の基礎を異にするとは解されないから訴の変更を妨げるものではない。それ故被控訴代理人の右主張は理由がない。

<以下、本案についての判断は省略>(裁判長裁判官大場茂行 裁判官西川美数 秦不二雄)

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